
いよいよ、ついに今年4月から始まる「電力小売り自由化」。中国エリアのみなさんにとって、それまで中国電力の独占市場に新電力会社が次々に参入しより安い電力会社を選べるようになります。まずは、この電力自由化制度がいったいどんな制度なのか最初に確認してみましょう!
●今までは「地域独占」
これまで私たちは、電気を使うために電力会社と契約しています。ここで言う電力会社とは、「関西電力」や「中国電力」のような地域の電力会社の事ですね。これらの地域電力は安定供給の義務を負うかわりに、電気事業の地域独占を許されてきました。これまでの電力会社は競争もなくかかった費用を積み重ねて電気料金を決める「総括原価方式」という方法を取っています。そして会社の業績不振やコスト増による影響は、電気料金の値上げと言う形で消費者が負担させることが出来ますし、そもそも地域独占のおかげで電気料金が高くなっても客を他社に奪われることはありませんでした。それでも消費者は地域電力会社と契約するしかこれまでは選択肢がなく、まさに電気業界は売り手市場でした。
●これからは電力会社を自由に選べるようになる
ですがこれからは、消費者が好きな電力会社から電気を買う事が出来るようになります。料金が安くなる会社を選ぶもよし、再生可能エネルギーで発電しているエコな電力会社を選ぶもよし。あなたが好きな電力会社を自由に選べる、というのが、電力自由化制度です。
●賃貸でも電力会社を選べる
新電力という制度は全ての消費者を対象にしています。賃貸アパートなどにお住まいの人で「自分は対象外なのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、それは違います。全ての人が自由に電力会社を選べるようになる、というのがこの制度のいいところです。
手続はカンタン!工事費は無料!
❏用意するもの
申し込みにあたって特別に用意するものは検針票くらいです。検針票とは、毎月電気をどのくらい使って料金がいくらですよ、という明細表のことです。新しく契約するときに「地点番号」などの情報を、新電力会社に伝える必要があります。この「地点番号」は、従来からあったお客様番号とは違い、2016年1月以降の料金明細に記載されている22桁の番号です。年明け以降の検針票を保管しておいてください。 また、既に契約済みのガスやケーブルテレビなどとのセット割引プランで申し込む場合は、これらのサービスのお客様情報も必要です。例えば、ガスとのセット割を申し込むなら、手元にガスの検針票も置いておくと、スムーズに手続きできるでしょう。
❏申込の流れ
乗り換える電力会社への申込みの流れを紹介します。
1.電力会社を選ぶ
料金プランなどを比較しながら、乗り換える電力会社を決定します。
2.乗り換え先の電力会社に連絡する
乗り換え先が決まったら、ネットや電話などの方法で乗り換え先の電力会社(新電力)に乗り換えの申し込みをします。申込にあたって、今契約している電力会社(関西電力や中国電力など)から毎月もらう「検針票」(電気料金が書いてある紙)があるとスムーズに手続きできるので、手元に用意しておきましょう。いつもすぐ捨てている人は1ヶ月分だけでもいいので手元に保管しておいてください。なお、今まで使っていた電力会社(関西電力や中国電力のような地域電力)に自分で連絡する必要はありません。新電力から手続きしてもらえるので不要です。
3.スマートメーターへの交換工事
今までの電力会社から新電力へ乗り換えるのは、ネットのプロバイダの変更手続に似ています。形式的に契約先を変更するだけで、電気が今までと同じルートを通って同じように送られてくることに変わりはありません。ですから、新たに配線を引き込むような大掛かりな工事はいりませんが、ただ1つ、スマートメーターへの交換が必要になります。
スマートメーターへの交換工事ってどんなことする?
●スマートメーターって?
これまでのアナログ式の電力メーターは、検針員の人が目視で使用量をチェックしていますよね。スマートメーターには通信機能があるので、目視による検針が必要なくなります。これがスマートメーターの最大の特徴です。また、30分ごとのリアルタイムの電気使用量もチェック出来るようになります。それによって、例えば時間帯ごとのきめ細かな料金プラン設定も可能になります。電力会社を乗り換えないから工事不要と思っている人もいるかもしれませんが、日本中のメーターがこれからスマートメーターに切り替わっていくことが決定しています。例えば、東京電力管内では2020年度までに2700万台全てをスマートメーターに順次切り替えていくことになっています。メーターは耐用年数が決まっているので、古くなったものから順に交換作業が進められていくようです。
●立会不要・停電も無し?
電力メーターの交換にあたっては、立会は必要ない場合がほとんどです。また、工事にあたって停電することもありません。稀に、電気を止めて工事する必要がある場合もあるようですが、その場合も停電時間はせいぜい5分程度で済みます。
●賃貸でも問題なし!
スマートメーターへの交換工事が必要、と言われると賃貸住宅にお住まいの方は心配に思うかもしれません。でもご安心ください。大家さんや管理会社の許可は必要ありません。原状復帰の必要もありません。そもそも電力メーターは電力会社の所有物なので、大家さんがとやかく言うことはありません。また、定期的な交換が義務付けられているものですので、大家さん側も「メーターを交換します」と言われれば「ああそうですか」となると思います。
●乗り換える度にメーター交換は必要?
電力自由化が定着すれば、電力会社の「乗り換え」を数年おきにする人が多くなると思います。そこで心配になるのが、乗り換えの度にメーターの交換が必要になるのか、ということです。でもご安心を。一度スマートメーターに交換してしまえば、後は耐用年数まで交換する必要はありません。
新電力の料金プランの比較ベスト4【中国エリア】
その他のエリアはこちらへ⇒ 九州 四国 北陸 関西 中部 関東 東北 北海道
今使っている電力会社からの乗り換えで「いくら安くなるのか」を計算した結果を、シュミレートしています。各電力会社の宣伝と違って、それぞれの家族構成で「標準的な使用量」でシュミレーションをしているので、多くのご家庭の実態に近い数字になっています。中国電力の標準プランと比較した料金の削減率と年間で見込める削減金額を基に上位5社を選びました。
総合1位 中海テレビ(鳥取西部地区限定)
鳥取県西部を営業エリアとする、中海テレビ放送も電力事業に参入しました。自社での発電所保有は無いので、提携先の発電所や卸電力市場などを利用して電気の調達を行うようですが、全国的に見ても非常に割安な料金水準を実現しています。中国地方では参入する新電力の数が少なく、お得になる額も小さくなりがちですが、そんな中で一社だけ異彩を放っているような状況です。電気の使用量が少ない世帯でも、10%近い値下げ率を実現しています。料金は21.39円/kWhという一律料金なので、使う量が多ければ多いほど、中国電力との料金差は大きくなっていきます(中電の単価は29.04円/kWh | 300kWh以上)。だいたい月に5500円(220kWh)以上使っているご家庭であれば値下げが期待出来るので、二人暮らし以上のご家庭ならまずお得に使えるでしょう。
特 徴
・ケーブルテレビ局 セット割も導入
・中国地方でダントツ一位の安い電気料金
注意して頂きたいのは、解約条件がかなり厳しく設定されています。他社では1年、長くて2年契約すれば違約金なしで解約できるのが一般的ですが、中海テレビの電気は「3年以上」使わないと「15000円」の違約金が発生します。期間、金額ともに全国でも有数の厳しい条件になっています。
ただ、この解約条件を考慮しても、中海テレビの料金は非常に魅力的です。今のところ鳥取西部以外に供給する予定はないとのことですが、エリア外にお住まいの人はすごくうらやましいですよね
総合2位 HTBエナジー
H.I.Sが運営主体になって5年を過ぎたハウステンボスは、今や国内はもとよりアジア各国からの観光客で溢れています。そのハウステンボスで生まれたHTBエネルギーが、H.I.Sのネットワークを駆使して、電力販売に参入することになりました。 再生可能エネルギーである地熱発電を大分県別府市で稼働する他、LNG火力発電などのクリーンエネルギーを主体にした電源開発を行う計画になっています。そして、そこで担ったノウハウをベースにして、これまでにない新規の発電事業に取り組むようです。
HTBエナジーの魅力はなんと言っても世帯人数に関係なく、既存の電気料金より5%節約を保障しているところです。とりわけ、一人暮らしや二人暮らし世帯は迷わずHTBエナジーを選んだ方がいい!と言える程、他社との間で圧倒的な差になっています。乗り換えると逆に料金が高くなってしまう新電力も多い中、ここまで安くなるのは驚異的と言わざるを得ません。
特 徴
・旅行代理店のH.I.Sの関連会社
・ハウステンボスから生まれたHTBエネルギーが運営
・旅行コンテンツをフル活用できる
・電気料金の割引は契約アンペアに関係なく、2015年の電気料金よりも5%の最低保障
注意して頂きたいのは、解約時の違約金の高さです。せいぜい3千円程度という金額の会社が多い中、HTBエナジーは「契約から1年以内に解約すると」「9千円+税」の違約金が発生します。しかし、途中で引っ越しても継続して利用できますし、エリア外に引っ越す場合は違約金は免除されます。また、スマホなどでありがちな「解約月」の定めは無く、1年経てば無料でいつでも解約出来るので、その点はご安心ください。
総合3位 auでんき
約4400万人が加入する携帯電話サービスであるauのユーザー向けに、KDDIがサービス展開予定の電力事業サービスです。KDDIは既に2014年から、auエナジーサプライというサービス名で大型マンションなどに電力供給を行ってきました。そうやって電力自由化の経験値を積み重ね、一般家庭向けにも参入したというわけです。
auでんきは、auの携帯電話かスマホに加入している方を対象に「auでんきセット割」を提供しているので、auのユーザーには魅力です。また、サービス対象エリア全国となっているので、新電力のサービスが充実していない地方在住の家庭にもおすすめと言えるでしょう。auでんきの特徴は、ポイントや割引といった特典ではなく、現在の電気料金と同じ金額で提供する代わりに使用量に応じてキャッシュバックを行う方法を採用しています。電気料金が高いほどキャッシュバック率は高くなるので、普段から多くの電気を使用する家庭は今よりもお得になります。
特 徴
・電気料金は従来の地域電力と同じ
・毎月の料金の1~5%をau WALLETにキャッシュバックして還元
4位 イーレックス
昭和鉱業・日立製作所・東芝といった大企業が株主であり、それらのノウハウと資金に支えられ、発電設備開発から電力売買まで幅広く事業展開を行っているのがイーレックス。2001年にすでに九州地区で電力小売りを開始していますから、新電力事業者の中でも老舗の部類と言えます。近年では安定した電力確保のために独自にヤシ殻を利用して発電時のCO2を徹底的に削減する技術を確立し、その技術を利用した国内最大級のバイオマス発電所は業界内でも注目を浴びています。現在顧客に提供している電力は工場からの余剰電力買取がメインですが、常に前進し続ける姿勢はさらなる技術革新を生み、リーズナブルな電力の安定供給につながるでしょう。また、これだけ新電力事業者が増えている中、10年以上電力小売り業に携わってきたその実績は消費者が安心して契約を結べる企業だという証でもあります。電力小売りだけでなく電力買い取り実績も豊富ですので、家庭用発電システムの余剰電力を地域電力会社に売電している家庭でも要チェックの会社です。
プランは、使う量が増えるほど割引率が高くなっていく設計になっています。しかし、使う量が少ない一人暮らし世帯でも、イーレックスに乗り換えることで料金が下がるのはうれしいです(高くなってしまう会社が多い)。セット割が今のところ無いのは残念ですが、電気料金単体で見てもかなりお得な料金設定になっています。
特 徴
・新電力の老舗 東証一部上場
・画期的なCO2削減技術を開発
・電源開発から発電、売買電まで一貫サポート
まとめ
中国電力エリアは、ほかの地域と比べて電気料金の水準がとても低く抑えられているようで、他のエリアに比べると節約幅がそこまで大きく感じられないと思った方も多いでしょう。鳥取県西部地区に住まれている方は、文句なしに中海テレビに乗り換えたほうがいいですね!それ以外の地域にお住まいの方はHTBエナジーを選ぶか、新規参入企業が増えるまで待つことも一つの方法と言えます。制度がスタートする4月以降もいつでも自由に会社を選ぶことができますので、焦らず行動することが大切です。